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人工光合成の光触媒反応を促進する銀ナノ粒子の機能を解明

プレスリリースはこちら

150722.JPG? この研究発表は下記のメディアで紹介されました。
?<(夕)は夕刊 ※はWeb版>

?◆7/27 日刊工業新聞
?◆8/31 日本経済新聞


概要

 大阪市立大学 複合先端研究機構 人工光合成研究センター副所長、吉田 朋子(よしだ ともこ)教授らのグループは、太陽光エネルギーを利用し二酸化炭素から化学原料の一種である一酸化炭素を創り出すことのできる半導体の一種、光触媒材料「銀粒子担持酸化ガリウム」の機能を詳細に調べた結果、直径1ナノメートル(=10億分の1メートル)前後の銀粒子を酸化ガリウムに担持した材料を用いることによって、光触媒機能が向上することを突き止めました。
 本内容は2015年7月13日(イギリス現地時間)に、英国王立化学会(RSC)発行の化学専門誌のオンラインページに掲載されました。

※ 担持(たんじ)=触媒として利用する金属の微粒子を担体に付着させること

【雑誌名】
 Journal of Materials Chemistry A
【論文名】
 Photocatalytic reduction of CO2 with water promoted by Ag clusters in
 Ag/Ga2O3 photocatalyst
【著 者】
 Muneaki Yamamoto(名古屋大学?大阪市立大学特別研修学生)、
?? Tomoko Yoshida(大阪市立大学)、
?? Naoto Yamamoto(名古屋大学)、
 Toyokazu Nomoto(あいちシンクロトロン光センター)、
?? Yuta Yamamoto(名古屋大学)、Shinya Yagi(名古屋大学)、
 Hisao Yoshida(京都大学)
【掲載URL】
 http://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2015/ta/c5ta04815j

なお本研究成果は、9月16~18日に三重大学で開催される第116回触媒討論会にて発表予定です。

研究の背景

 石油?石炭などの化石資源に代わって二酸化炭素を炭素資源として有効に利用すること、また、その化学変換を化石資源から得たエネルギーではなく太陽光エネルギーやといった、私たちの身近にあるものを使って行うための技術革新は、豊かな人類社会を持続させるためにも重要な課題です。私たちはこれを、植物が光合成によって二酸化炭素を自分の成長に必要な糖類に変換することになぞらえて「人工光合成」と呼んでいます。それは、まさに次世代の繁栄のために必要な技術と言えるのではないでしょうか。
 現在、人工光合成技術の一つとして、半導体の一種である光触媒を用いて二酸化炭素と水から一酸化炭素、水素、酸素を生成する技術開発が進められています。特に、地球規模で削減目標を定められている二酸化炭素を還元して一酸化炭素を生成する優れた光触媒の開発は、これから挑戦すべき重要な研究課題です。通常光触媒は太陽光エネルギーを利用し水を水素と酸素に分解しますが、最近、いくつかの光触媒に銀微粒子を添加すると、水素生成に加えて二酸化炭素の還元に基づく一酸化炭素の生成が著しく促進されることが報告されています。しかし、銀微粒子を添加するとなぜ一酸化炭素生成が促進されるか、その詳細が明らかになっておらず、より効率的に一酸化炭素を生成するためには、どのように銀微粒子を添加すれば良いかという具体的な指針も得られていませんでした。

研究の内容

 私たちは、銀ナノ粒子を添加した酸化ガリウム光触媒を利用した人工光合成技術によって、二酸化炭素と水から、一酸化炭素、水素、酸素を生成する反応系の構築に取り組んでいます。特に二酸化炭素を還元して一酸化炭素だけを生成させる技術を目指しています。本研究では、酸化ガリウム光触媒上の銀微粒子の構造を原子レベルで調べ、かつ、光触媒表面に二酸化炭素等の気体がどのような形で存在しているかを調べたところ、特に銀微粒子のナノメートルスケールでの大きさによって一酸化炭素の生成機構が変化することを発見しました。一酸化炭素生成の反応中間体である「ギ酸塩」の生成が、酸化ガリウム上の直径1ナノメートル前後の小さな銀ナノ粒子の近くで促進され、一酸化炭素が効率的に生成していることが明らかになりました。

150722.png
銀ナノ粒子担持酸化ガリウム光触媒上での二酸化炭素還元反応

期待される効果

 一酸化炭素は化学工業?産業における重要な出発物質であり、様々な比率で水素と反応させることによってあらゆる燃料や化学物質を合成することができます。これまで、太陽光と二酸化炭素と水から一酸化炭素を生成する光触媒は、銀微粒子を添加することにより反応促進が試みられてきましたが、具体的にどのように銀微粒子を添加すれば良いかという指針は得られていませんでした。本研究により、直径1ナノメートル前後の大きさの銀ナノ粒子が、一酸化炭素生成に必要な反応中間体の生成を促進させることが明らかとなりました。このように一酸化炭素生成反応を促進させるのに有効な銀微粒子の具体的な大きさとその触媒反応への影響を明らかにした上で、これを触媒設計指針へフィードバックさせることは、より高効率な触媒の開発や希少資源の無駄のない有効利用へとつながると考えられます。いまだ経験やノウハウに頼るところの多い光触媒の調製において、合理的な触媒設計指針として光触媒の開発を加速させることを期待しています。

今後の展開について

 本研究で得られた触媒設計指針を基に、光触媒に添加する銀微粒子を最適な大きさに制御したり、酸化ガリウム以外の多くの光触媒の新たな機能発現への応用が期待されます。また、より効率の良い光触媒を開発し、二酸化炭素から確実に一酸化炭素だけが得られる新しい人工光合成技術への展開に取り組んで行く予定です。

共同研究、資金等

 本研究は名古屋大学?京都大学との共同研究で、下記の資金援助を得て実施されました。
<科研費?新学術領域研究>
 「人工光合成による太陽光エネルギーの物質変換:実用化に向けての異分野融合」
 http://artificial-photosynthesis.net/